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  • 2017.06.06 Tuesday
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    淀川100km

     どんな結果になろうと、この大会で暫くは走るのを休もうと考えていた。
    昨年のラダック333kmのレースでの無理が祟り、未だに坐骨神経痛が治らない。
    こんなことは初めてだった。2時間走ると神経痛が出て走れなくなる。我慢して走っても30kmが限界だった。
    この7ヶ月の治療費にいったいいくら費やしたことか。考えただけでも憂鬱になる。
    ここで奇跡が起きて、10時間以内で完走したいものだ。

    暗黙の了解で、千夏と走り出した。
    千夏の目標は10時間以内だ。
    出来るならば、最後まで引っ張ってあげたい。
    せめて、30kmまでは引っ張ろうと思って走っいた。

    5kmの最初の折り返しでは、仲間が集中した顔で折り返してくる。
    そして僕達も折り返した。
    心臓の嫌な感覚が起き、視界がぼやける。
    「勘弁してくれ、まだ早すぎるぞ」
    打ち寄せる波のように、胸が締め付けられたと思ったら解放されるという繰り返しだった。
    5kmを折り返し、10kmのスタート地点にこれから向かう。そこで待っていて欲しいと千夏が言う。
    9km辺りまでは僕も危険を感じたので10kmで止めるつもりだった。
    どういうわけなのか、10kmのエイドに突いたら違和感がなくなっていた。
    再び千夏を、皇居の5kmを28分のペースで引き出した。
    雨が降り出した。やはりなのか、25km辺りで坐骨の痛みが顔を出す。
    このままでは俺が潰れてしまう。
    選択をしなければならなかった。
    千夏は次でやめて欲しいと言い、35kmのエイドからは一人で行かせた。
    その後姿は、調子に乗ってスピードを上げたように見える。
    大丈夫か?
    僕はスピードから解放され、みっともないが遠慮なく左足を引きずり出す。
    最後まで走れるわけ無いから、足を止めるポイントを考え出した。
    でも、何故か心の奥底では完走するのだと、どんなにみっともない走り方をしてでも足を止めないぞ、と思っていたのだ。

    久しぶりにウルトラの原点を味わう気になっていた。
    それは辛さの醍醐味。
    ウルトラは辛くて当たり前。
    暑い寒い痛いの繰り返し、その苦しみは時には和らぐのだ。
    これが面白い。
    痛み止めの薬を服用したら、それは本来の自分の姿ではない。
    人の身体には、克服しようとする力がちゃんと備わっているからだ。
    所詮、趣味の延長なのに、薬に頼る、それはやりすぎでと考えている。
    でも時にはその痛みが絶望的な気にもなってしまうのも事実だ。

    45kmエイドで止めれば帰りが楽だ。
    脚は引きずってはいるが、他のランナーとは退けを劣らないスピードだ。
    皆、辛いのだ。
    55kmを折り返すランナー達、トップ10辺りは以前僕が居た場所、その間は300人だった。
    千夏も折り返してきた。仲間の丸山が引っ張っている。
    予想以上の頑張りだと思った。
    僕も予想を裏切る走りをしたいと刺激をもらう。
    折り返すと痛みを感じない、今のうちに千夏に追いつこう、もしかしたらまだサブ10の可能性があるかもしれない。
    65km付近まではペースを上げることができた。
    しかし痛みが戻ってきてしまい、ズルズル左足を引きずる音を立てだす。かなり酷い音だ。
    周りのランナーにとっては耳障りな音だったと思う。でも、わざとではない、これが今の僕の現実。
    お願いだから頬って置いて、応援に来てくれた仲間が僕を見つける。
    「ああみっともない」
    少し気取って走り、見えなくなった頃、再びズルズル音を立てながら走り出した。
    時間が過ぎ、距離も少し稼いだ。
    80km過ぎ、余りの痛さで僅かな登りなのに歩いてしまった。
    既に10時間以内の完走は不可能になっていて、この歩きで10時間30分でのゴールの希望も消えてしまった。

    大きな痛みは500m程進むと襲ってくる。
    その都度、脚を止め、屈伸をして走り出した。
    歩いても完走は出来るところまでやって来ている。
    皆を待たせてはいけない。
    遅いが、遅いなりのプライドを持っていたい。
    膝の屈伸をした後に10歩だけ歩くことにした。このリズムでいい。
    息を弾ませて、最後の力を振り絞りたいが、今の僕がそれをやってしまったら一環の終わりだ。もっと迷惑がかかる。
    体と心が全く噛みあわないもどかしさを感じた。
    それでもゴールは少しずつ近づいてくるのだ。
    ゴールの方から声援が届いた。

    11時間25分。
    僕のウルトラ史上最も遅いタイムだった。
    ゴールのテープを切ると千夏の顔があった。
    目に涙を浮かべていた。
    「千夏サブ10おめでとう」

    暫くは走れなくなるだろう。
    痛みはピークに達したけれど、心臓の違和感は10km以降感じなかった。これでいい。
    淀川100km、無理矢理だったが完走してしまってよかった。
    次の大会出場予定を組むこと出来ないでいる。
    目標の無いのは詰まらない。でも仕方がない。今はこれでいい。



     

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      • 2017.06.06 Tuesday
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      • 18:00
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        コメント
        ARVCを患いながらもランナーを続けられている姿に感服いたします。私は無難な道を選びましたが、それに後悔はありません。ただ、佐藤さまが走り続けてくださっていることが間違いなく私に力を与えてくれています。
        • TAKA
        • 2015/05/07 11:23 PM
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        NHKおはよう日本に出演

        動画 YouTube     (2013 LA ULTRA THE HIGH 222km at RYOICHI SATO)            2013年、8月3日

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